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山口県立萩美術館・浦上記念館 本館特別展示室(和風展示室) 茶室のしつらえ |
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「揺らぐ日々の中に」 一 橋本真之 一 Hashimoto Masayuki 一
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![]() 「果樹園 - 果実の中の木もれ陽、こもれ陽の中の果実」(全長38m)、「果樹園 - 変換」(奥) |
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山口県立萩美術館・浦上記念館の和風展示室(茶室)は、アーティストによる茶室の空間表現の場として公開されています。2005年4月からは、第9回目として埼玉県在住の鍛金作家、橋本真之(はしもと まさゆき)さんによる茶室のしつらえが展示されています。
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「揺らぐ日々の中に」
萩美術館・浦上記念館における展示覚え書橋本真之(はしもと まさゆき) |
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良くも悪しくも、私の仕事の現在の限界がここにあります。展示作品のひとつ「果樹園一果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実」は、継続してつくり続けている、私の中枢となって来た仕事です。この作品は1978年に制作開始しましたが、今では内部に入ってしまった部分を発表した後に、いくつかの展示を経て、1986年に最初のまとまった発表をしております。その後も増殖 ・展開しつつ発表してきましたが、現在もその途上にあります。そして、新たな制作によって、最初に制作した発端部分から順次入れ替わって行くために、この数年にわたって神経を傾注して来ました。
この増殖・展開して行く「果樹園……」とは対照的に、一方で次第に空間を小さく凝縮して来た作品「凝集力」と、その近年の展開が茶室に展示してあります。「茶」は戦国の激変の時代の中で形づくられて来た世界でしたが、その身体に染みついた騒乱の臭いの中で、全感覚をそば立てて、他者や物達と微かに交流する清浄の気配というものが、かの「茶の湯」の世界と私は見ました。けれどもそれは、利休や織部の死のかたちが、私を誘う一期一会の場処のように思えて、後ずさりしたくなるのでした。私が茶室を苛烈な密室空間として思い出さざるを得ないのは、武器・武具にあふれた時代の騒乱の中で、武器を持ち込まないルールではあっても、そこに沈黙の気配として見えるからでしょうか?-
この茶室空間の中では、これまで制作した作品の銅の切りくずの中から、意識的に立ち上がって来た造形「切片群」が威嚇的で重要な役割を果たしております。「果樹園……」とともに、今生きているこの場処の揺らぐ日々の刻印が、これらの造形運動の形態に強く影を落としているのは確かなことです。けれども、私の導き出した形態は、何ものも表現しないが故に、むしろ、それぞれの観照者の内に揺曳するイマージュに結びつくことになります。それ故、私と観照者は作品空間を媒体として気配を共有することができるのです。私はこうした仕事の時空域の中から跳躍して、「存在の上澄み」を見い出したいのです。観照者とともに息を殺して、あえかに成立する倫理的次元の気配を掬いとることができるかどうかが、私の造形運動に自ら課した積年の間題なのです。さもなければ、造形行為はこの時代の不快な空気そのものに成ってしまうだけのことではないでしょうか? 人々の心の内に、果樹園の収穫の歓びを、そっと手渡すことができるのであれば、その時こそ、私はあえて捨てて来た様々な歴史的因習に換えることができたと思えるに違いありません。その変換こそ私の望みでもあります。 (2005年3月) |
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「当て盤絞り」
鍛金は金床に載せた金属板を上から金槌で叩いて成形する金工技術の一つです。ただし橋本真之さんの造形は、金床に等しい当て盤(あてばん)を左手に持ち、それと右手に握った金槌で金属板を挟むように打ち付けてかたちを生み出していくという、原理こそ器物を製造する古来の鍛金技法と同じですが、とても型破りな手法を用いてなされます。「当て盤絞り」と作家自身が名付けたこの方法が、一般的な鍛金技法に比べて優れて創造的なところをあげるとすれば、作り手自らが 1978年10月20日から制作が始められたという『果樹園一果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実』は、今日まで増殖するかのように営々と制作が継続して展開されている作品群であり、橋本さんにとって畢生(ひっせい)の大作です。銅板の全面に残る鎚目の痕が物語る果敢に積み上げられた時間と、その結果としての作品が空間に占めるスケール感は、みる者を圧倒し驚愕の念さえ抱かせます。しかし、その膨らみや縮みを見せる伸びやかな曲面は、たおやかな生命の営みすら想わせて、本来の重量を忘れさせるほど軽やかに成長を遂げています。 そういった印象を与える一つの要素で、遠目にもよくみえ、所々にリズミカルに配置されたほぼ同径に開かれた孔(あな)からは、作品の内部をかいまみることができま この作品の外見上のかたちには内外という部位の区別はありますが、構造体である銅板に表裏の関係はありません。つまり、ある制作局面において形態の内側であった裏面は、次の制作段階では外側に出て表面へと反転するという、一つの面が連続しながら入れ替え可能な膜状の組織として内と外とを同時に形成しているのです。わたしたちが遠目にみた張りのある作品のかたちは、膜状組織の最終的な反転の結果であり、いわば作品構造の外皮部分なのです。橋本さんはこの表裏等価な存在として認識した板面在「運動膜」と呼びます。「運動膜」は複雑な反転を繰り返すことと、縦横に進展させることによって、形態に張力や躍動感を付与するとともに、作品の中心軸を暗示しているのです。 私の腕があと5cm長かったならば、私は別な形態、あるいは空間を生んでいたに違いありません。腕力がもっと強かったならば、あるいは体力にもっと持久力があったなら、私の造形思考は別の筋道を取ったに違いないのです。私の技術は肉体の条件が如実に顕れるという種類のものであり、金槌の槌目のひとつひとつを見れば、おそらく私の脆弱な肉体と精神の揺れが見て取れるに違いありません。 このことは、銅板という素材自体を作品構造として組み立てていくということです。素材の性質を遍く受け入れることで素材自体を作品構造にとって不可欠な造形要素として明確化する在り方、つまり鍛造の過程と表現する自我(それは固有の思考であり身体でもある)とを同定することで形を作り出そうとしているのです。 この独自な鍛造の方法は、あたかも生命が成長するように、その存在と創作活動を合致させるべく志した作家が採り得た技法の必然的な帰結でもあったのです。 山口県立萩美術館・浦上記念館 学芸課主査/石崎泰之 |
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搬入・展示の様子
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4月13日、10tトラック 4台で作品が萩に到着。
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作品の汚れを落とす、作家の橋本真之さんと奥様。
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搬入口から大人数で作品を持ち上げ設置する。
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萩の若手作家も搬入の手伝いにかけつけた。初めて目の当たりにする橋本さんの作品に驚愕・・・。
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展示中に訪れた三輪和彦さん。
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山口県立萩美術館・浦上記念館、担当の石崎泰之さん
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橋本 真之(はしもと まさゆき)
鍛金造形作家。昭和22(1947)年11月18日、埼玉県上尾市生まれ。 |
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1970年 東京芸術大学美術学部工芸科・鍛金専攻 卒業 1971年 初個展(東東ときわ画廊) 1976年 《運動膜》のタイトルによる最初の個展(ときわ画廊) 1982年 個展(東京 ・お茶の水画廊) 1983年 たまがわ野外彫刻とテキスタイル展(二子玉川)出品 1985年 筑波国際環境造形シンポジウム(筑波研究学園都市)出品 1987年 時間の肖像展(東京ギャラリーいそがや)出品 1988年 個展《ラ・ベールの木のために》(柏市 la・belle) 「花の表現」展(埼玉県立近代美術館)出品 1989年 第2回ミームプール展(東京 ・小原流会館)出品 サントリー美術館大賞展’89〈挑むかたち〉(東京 ・サントリー美術館)出品 1990年 インサイド・アイ展(東東/京都アートセンター)出品 「作法の遊戯」展(水戸芸術館現代美術センター)出品 1993年 「拡大する鍛金」展(栃木県立美術館)出品 「手わざと現代」(埼玉県立近代美術館)出品 「金属とガラスの造彫」(神奈川県民ホールギャラリー)出品 1994年 「かたちとまなざしのゆくえ」(川崎IBM市民文化ギャラリー)出品 「現代美術の磁場」(茨城県つくば美術館)出品 1995年 「第30回今日の作家展」(横浜市民ギャラリー)出品 「第16回現代日本彫刻展」宇部市野外彫刻美術館賞・埼玉県立近代美術館賞 1997年 「第17回現代日本彫刻展」山口県立美術館賞 「合理的な迷宮」(東京マスダスタジオ) 1999年 「工芸オブジェの系譜」(東東国立近代美術館工芸館) 2000年 「越後妻有アートトリエンナーレ」(新潟県 ・松代町) 「知覚するかたち」(福井県立美衛館) 2002年 「現代日本の工芸一素材と造形思考」 2003年 「アーティストプロジェクト1 成長する造形一橋本真之《果実の中の木もれ陽》」 2004年 個展《橋本真之展》(東京コンテンポラリアートNIKI) 2005年 「アルス・ノーヴァー ・現代美術と工芸のはざまに」(東京都現代美術館) その他、グループ展、個展多数。 |
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◆詳しいお問い合わせ先◆ 山口県立萩美術館・浦上記念館 |