山口県立萩美術館・浦上記念館 本館特別展示室(和風展示室) 茶室のしつらえ

 山口県立萩美術館・浦上記念館の茶室は、アーティストによる茶室の空間表現の場として公開されています。
 2000年1月からは、第4回目として萩市在住の作家・三輪和彦(みわ かずひこ)さんによる茶室のしつらえ「黎-REI-」が展開されています。

 この茶室の第1弾は、萩市在住の陶芸家、三輪龍作による「三輪龍作の美学―壱」として茶の精神、美意識をエロティシズムで表現し固有の茶室空間を創造しました。
 98年1月からは、その第2弾として、東京都在住のいけばな作家、中川幸夫(なかがわ ゆきお)による茶室のしつらえ。染織家福本潮子の藍染めが四畳半一面に敷きつめられ、中央にラベンダーの花粒がちりばめられたその空間は、「茶室は自分の心を写し出すところ」という中川幸夫の概念を表出したものが展開されました。
 第3回目、東京都在住の建築家、内藤 廣(ないとう ひろし)による「Gaudiの透ける眼差し」と題された茶室は、倒錯する眼差しにより既成概念の中に埋没した茶室空間そのものを問い直すことを表現しました。


三輪和彦の茶室「黎-REI-」

 私達は普段、一体どれだけ、世の中が本当に見えていると言えるのだろうか?氾濫する情報は確かに便利だが、それらが幾重にも覆い重なって、本当に見るべきものを隠してしまっているのではないだろうか―。

 時は2000年。世紀末であり、また新世紀の夜明けでもある。そして世の中はかつてない混沌を呈している。私達は、何処へ向かおうとしているのたろうか?時代の過渡期とも言える今、茶室という空間を表現の場として与えられた。「黎‐REI‐」は400年に及ぶ伝統的精神の歴史を内包する空間への新たな試みである。

 茶室とは、宇宙であり世の縮図であり、胎内であり、心の中である。そして、ここでの「茶」は、映像である。光と陰、時間と空間を凝縮したそれは、茶室の精神世界への誘導剤である。

 堅い鉄板で閉ざされたこの空間を僅かに開けられた隙問から窺うことは、すべてが見えないもどかしさを感じさせるかもしれない。けれども、心の目を開いて、隙間の向こうを見ることが出来れば、魂は鉄板をすり抜け、もっと純粋にこの空間を感じることが出来るだろう。

 今ここで、何らかの答えを提示するつもりはない。むしろ未だ、模素状態である。試みは始まったばかりなのだ。この一年間、常にこの空間を通して世の中を、そして自らを見つめていきたい。呆たして一年後、この混沌は、淘汰され、一点に集束していくのだろうか?それとも、更なる茶室世界の迷宮に迷い込んでしまうのだろうか?

(文;三輪和彦/撮影;田中学而)


  三輪和彦 MIWA Kazuhiko Profile   

1975年 米国留学 サンフランシスコ・アート・インスティテュート
1981年 帰国
1984年 現代陶芸「今、大きなやきものに何が見えるか」(山口県立美術館・山口)
1987年 「机上空間の為のオブジェ展」(渋谷西武百貨店・東京)
     個展「恒久破壊」(ギャラリー上田・東京)
1988年 「机をめぐるオブジェ展」(渋谷西武百貨店・東京)
     「東西現代陶磁展」(ソウルアートセンター・大韓民国)
     中川幸夫・三輪和彦「ばけるほのお展」(彩陶庵・萩)
     個展「三輪和彦展」(渋谷西武百貨店・東京)
1989年 「アート・エキサイティング '89」
      (埼玉県立近代美術館・浦和、クイーンズランド美術館・オーストラリア)
     個展「無想の地」(ギャラリー上田・東京)
    「あそびのシンポジウム」(彩陶庵・萩市)同91年
1990年 「土の発見・現代陶芸と原始土器」(滋賀県立陶芸の森・信楽)
     「西瀬戸現代美術展」(愛媛県立美術館・松山)
1991年 個展「白い夢」(日本橋三越本店・東京)
     「山陽・山陰路の現代陶芸」(東広島市立美術館・東広島市)
     「第4回 MEME POOL」(小原流会館・東京)
1991年 「立体表現の流れ展」(山口県立美術館・山口;〜1992年)
1992年 「日本の陶芸『今』百選展」(三越エトワール・パリ、日本橋三越本店・東京)
     「陶芸の現在性展」(神戸西武・神戸、池袋西武・東京)
     個展「白い夢 '92」(日本橋三越本店・東京)
     個展「土―白の変容」(西武百貨店高輪会・東京)
1993年 「TORIDE」(財)恰美術館
     「素材の予感」(マスダスタジオ・東京)
1995年 「はぎやき展―破壊と前衛の造形―」(山口県立美術館・山口)
1997年  個展「DEAD ENDのデッドエンド展」(彩陶庵・萩市)
1998年 「土と映像の形態学」(HAGI世界映画芸術祭・萩) 
1999年 「陶芸の現在-土の形態学-」(日本橋高島屋、東京/京都高島屋、京都)
 


◆詳しいお問い合わせ先◆ 山口県立萩美術館・浦上記念館
〒758-0074 山口県萩市平安古586-1 TEL:0838-24-2400 FAX:0838-24-2401