山口県立萩美術館・浦上記念館

山口県立萩美術館・浦上記念館 本館特別展示室(和風展示室) 茶室のしつらえ

柳原睦夫 ~茶室・空室・四畳半~ 平成23年4月29日(金・祝)~平成24年3月25日(日)

  山口県立萩美術館・浦上記念館の和風展示室(茶室)は、
 アーティストによる茶室の空間表現の場として公開されて
 います。

  2011年4月からは、第15回目として京都市在住の陶芸家、
 柳原睦夫(やなぎはら むつお)さんによる茶室のしつらえが
 展示されます。

取材を受ける作家の柳原睦夫さん(右)
   
これまでの茶室・展示作家
2011 第15回目 柳原睦夫 「茶室・空室・四畳半」 陶芸
2010 第14回目 WOO KWANHO(禹寛壕) 「人間というものー禹寛壕」 陶芸(磁器)
2009 第13回目 吉村芳生  「煉獄の茶室」 絵画
2008 第12回目 金子 司  「種々(くさぐさ)」 陶芸
2007 第11回目 古伏脇 司 「風、水、根を張るべき場所」 漆芸
2006 第10回目 兼田昌尚  「且坐(さざ)ー稜線のムコウヘー」 陶芸
2005 第 9回目 橋本真之  「揺らぐ日々の中に」 鍛金
2004 第 8回目 福本潮子  「乗空の茶室一立礼の席一」 藍染
2003 第 7回目 中井川由季 「真夏の月」 陶芸
2002 第 6回目 柳井嗣雄  「境界-関係の通路として」 ファイバー
2001 第 5回目 椿 昇   「緑色的平凡」 現代美術
2000 第 4回目 三輪和彦  「黎‐REI‐」 陶芸
1999 第 3回目 内藤 廣  「Gaudiの透ける眼差し」 建築
1998 第 2回目 中川幸夫  「鏡の中の鏡の鏡」 生け花
1997 第 1回目 三輪龍作  「三輪龍作の美学 茶室のエロティシズム」 陶芸

柳原睦夫 ~茶室・空室・四畳半~

柳原睦夫 ~茶室・空室・四畳半~

 山口県立萩美術館・浦上記念館の茶室は、現代建築の奥まった一角にガラスで仕切られた部屋の中にある。二重箱構造である。茶室は二方の囲いがなく、外囲いのガラスを通して外光が部屋の隅々に届く。数寄屋風サンルームの体である。

半年前だったか、この茶室を自由に使ってみませんかとのお誘いをいただいた。それでは水指、柄立、建水の皆具のみならず、風炉、茶入、茶碗、蓋置、菓子鉢、その他思いつくままにすべての茶道具を作ってみましょうとお引き受けした結果が、野暮な茶陶フルセットの誕生となったしだいである。

私と茶陶の繋りは浅い。意図的に距離をおいてきたようにも思う。しかし決して無縁ではなかったのである。それどころか、早くから私の創作の核の部分には、15世紀中葉の茶人村田珠光の存在があった。珠光が、弟子の古市播磨に与えた「心の文」、その一節に「この道の一大事は和漢のさかいをまぎらかすこと肝要」とある。さてこの「さかいをまぎらかす」とわ。更につづめて「まぎらかす」という言葉の意味するものわ。私はかつてこの一節の真意を求めて、思考の逡巡をくりかえし、漸く創作の方向性を得たという経緯がある。

陶磁の世界において、「和漢のさかいをまぎらかす」とは和物即ち触覚的陶磁と、唐物の特質である視覚的陶磁のさかいをまぎらかすことである。つまり唐物茶入と国焼茶碗を同一平面に配置し、融合と変化の面白さを追求することである。日中の歴史的な力関係を考えるとナショナリズムの臭いがしないでもないが、珠光の「心の文」が提起している問題は、極めて現代的な示唆に富んでいるといえるだろう。

茶陶ならば、考えるまでもなく解答はすでに用意されている。茶室の幽暗は、装置として、茶人を覚醒から瞑想え、即ち視覚から触覚えの移行を容易にする。
求道から享楽え。享楽から求道え。茶の湯の人達は、こともなげに二つの領域を往還する。

目で触り指で見る、初期茶人の「眼力」はすでに失われている。
私が茶陶に距離を置いた理由はここにある。

 

2011年嵯峨工房にて
柳原睦夫


撮影:斉城卓

◆床
  陶板  銘「白雲独行」  1980年
  花入  四点組銘「烏合」 2011年

  風炉  鉄カセ釉     2011年
  水指  浮水指 大取手  2011年
  茶入  共蓋 銘「メタボ」 2011年
  建水  2011年
  蓋置  2011年
  菓子鉢 取っ手つき 銘「手ちがい」 2011年
  柄立  鉄カセ釉 銘「呵呵」 2011年
  茶碗  銘「初もの」 2011年
   替  銘「みだれ」 2011年
   替  銘「あのころわ」 2011年
  香合  2011年

◆方形展示台
  ケツル  銘「デロンギ」 2011年
  ケツル台 銘「デロンギの平袴」 2011年
  水指   浮水指大ツノ取ッ手 2011年
  蓋置   2011年
  建水   2011年
  茶碗   銘「うづき」2011年
  菓子器  2011年


撮影:斉城卓

    

柳原睦夫(やなぎはら むつお)

略歴◆

1934
6月16日、愛媛県宇和島市生まれ
1936
郷里の高知市に移る
1960
京都市立美術大学陶磁器専攻修了(富本憲吉、近藤悠三、藤本能道に師事)
1966
州立ワシントン大学美術学部講師(-1968年)
1974
アルフレッド大学及びスクリプト大学陶芸学部助教授(-1976年)
1998
京都市芸術功労賞受賞
2000
京都市文化功労賞受賞
2002
日本陶磁協会賞金賞受賞
2003
「柳原睦夫と現代陶芸の尖鋭たち」展(高知県立美術館)
2005
1984年以来教鞭を執ってきた大阪芸術大学を定年退職
  第18回京都美術文化賞受賞
 京都市在住、大阪芸術大学名誉教授

◆詳しいお問い合わせ先◆ 山口県立萩美術館・浦上記念館
〒758-0074 山口県萩市平安古586-1 TEL:0838-24-2400 FAX:0838-24-2401