山口県立萩美術館・浦上記念館 本館特別展示室(和風展示室) 茶室のしつらえ

「種々くさぐさ)」 金 子  司  平成20年4月5日(土)〜平成20年10月26日(日)

 山口県立萩美術館・浦上記念館の和風展示室(茶室)は、アーティストによる茶室の空間表現の場として公開されています。2008年4月からは、第12回目として萩の若手陶芸家、金子 司(かねこ つかさ)さんによる茶室のしつらえが展示されます。

 今年度は平成22年に開館を予定する陶芸展示施設の建築工事に伴って、平成20年10月27日(日)〜平成21年3月31日(火)まで全館休館のため、茶室の展示も約半年間となります。

これまでの茶室・展示作家
2008 第12回目 金子 司  「種々(くさぐさ)」 陶芸
2007 第11回目 古伏脇 司 「風、水、根を張るべき場所」 漆芸
2006 第10回目 兼田昌尚  「且坐(さざ)ー稜線のムコウヘー」 陶芸
2005 第 9回目 橋本真之  「揺らぐ日々の中に」 鍛金
2004 第 8回目 福本潮子  「乗空の茶室一立礼の席一」 藍染
2003 第 7回目 中井川由季 「真夏の月」 陶芸
2002 第 6回目 柳井嗣雄  「境界-関係の通路として」 ファイバー
2001 第 5回目 椿 昇   「緑色的平凡」 現代美術
2000 第 4回目 三輪和彦  「黎‐REI‐」 陶芸
1999 第 3回目 内藤 廣  「Gaudiの透ける眼差し」 建築
1998 第 2回目 中川幸夫  「鏡の中の鏡の鏡」 生け花
1997 第 1回目 三輪龍作  「三輪龍作の美学 茶室のエロティシズム」 陶芸

「種々(くさぐさ)」のかたち

 細くしなやかなかたちに被われた四畳半。ここには、萌芽から枯橋にいたるまでの、移りゆく植物の生態が、ひそやかに繰り広げられています。しかもそれらは、そこに届く光量の多寡に応じた生育ぶりをみせて、室奥の青黒い肌合いのものから斜光を浴びて枇杷色に輝くものまで、じつに微妙な明暗のグラデーションを纏って繁茂し、茶室内を穏やかなモノトーンの世界に染め上げています。

 萩焼の土と釉でつくられたこれらのかたちの一つ一つは、そのほとんどが花弁や花穂をおもわせる片々や膨らみを先端部にもたげています。しかしよく観ると、いずれも葉のない茎状に象られ、まるで花時のヒガンバナか、スギナの胞子茎であるツクシから袴を取り去ったような姿のものばかりです。そして、皆どことなくうつろな気色をただよわせているように感じられます。

 これらの花茎を畳から実生したように配したことだけでなく、個別の生長度合いを示す態様をかたちの集合として仮設(インスタレーション)することによって、作家は現実にはありえない擬似的な自然景をここに構築してしまいました。

 この奇妙な光景へと茶室空間を遷移させたことについて、作家は、茶会という特定の行為から生じる「雰囲気=大気」に着想を得て、茶室という空間のもつ「雰囲気=気分」を造形的にアプローチしようと試みた結果だと述べています。

 観る者と作り手の間にわずかな距離をつくり、精神性の根幹にある生命観の複雑さを遠慮がちにたどるまどろっこしい表現手法のようですが、ここでは特定の場所や空間に堆積した計り知れない想念を丁寧に紐解こうとする、繊細でありながらも包括的で野心的な表現意志が窺えます。

 野辺に繰り広げられる植生の栄枯盛衰は、特別な場所に建立される一座なるものの性格と、そこに寄り合った個人の境涯との逢着が、堆積した時間の重みとともに想い起こされる光景なのです。

 それは、俗界の塵埃から離れて存在する茶室に籠もる、大気中の水分である湿気というものを伝手に、そこで催された茶会という行為に凝縮される人の生をイメージしようとする企てであり、点前で生じる湯気や参会した客人の吐息という、行為の必然としての温もりある湿気、つまり人が活動したがゆえに残った水蒸気の凝りを、畳から生長する植生のかたちにこと寄せて表示したのです。

 作家は常態なき人の一生の多様さを植物の生長に仮託する手法で見つめ直そうとしました。茶室に配置された、陰生植物の群叢を連想させるこれら陶造形のインスタレーションは、物言わぬ営みのうちに潜む強靭な生命力へ心を通わせることをわれわれに促しているように思えてなりません。

山口県立萩美術館・浦上記念館 学芸課長 石崎泰之


金子 司 KANEKO Tsukasa
1970
萩市に生まれる
1991
陶芸をはじめる、金子信彦に師事(城山窯)
1995
四人展/小川家長屋門(萩市)
1996
二人展/旧英国領事館(下関市)

三人展/GALLERY  T・K ART(大阪)

萩市美展・大賞受賞
山口県美術展覧会・入選
1997
二人展/ギャラリー ラ・セーヌ(山口市)
山口県美術展覧会・佳作
1998
個展/ギャラリー NAKANO(山口市)
1999
個展/ギャラリー ラ・セーヌ(山口市)
2000
個展/ギャラリー草莽(萩市)
益子陶芸展・入選
山口県美術展・優秀賞
2001
陶2001未来へのメッセージ/山口きらら博(山口)
陶2001 はぎてん/ギャラリー草莽(萩市)
世界陶磁器エキスポ2001大韓民国/(韓国)
個展/ギャラリー ラ・セーヌ(山口市)
2002
- PHRASE  CERAMIC - /TIGHT  ROBE(徳山)
2003
萩陶芸家協会新鋭展/世田谷美術館(東京)
萩4人のうつわ/彩陶庵(萩)
痕跡コミュニティーとアート/traces(岡山市)
六人展/ギャラリー草莽 (萩市)
2004
個展/ギャラリー濱田(岡山市)
朝日陶芸展・入選
萩陶芸家協会展 - 萩陶芸の現在 - /山口県立萩美術館・浦上記念館(萩市)
2005
独立、開窯
萩4人のうつわ 弐/彩陶庵(萩)
「萩陶芸・輪島の漆芸」〜現代作家による響演/輪島漆芸美術館(輪島市)
「いろいろいろ2005」出展/カギロイ(東京)
個展・RESTART カネコツカサノカタチ/彩陶庵(萩)
2006
「〜meet the traditional craft 〜 和のある暮らしのカタチ展」新宿リビングセンターOZONE(新宿)

4th INTERNATIONAL CONTEMPORARY CERAMIC SESSION 2006/Museum of Arquitectura etc(Buenos Aires・Obera/Argentina)
Ceramic Workshop/Misiones Fine Arts University (Obera/Argentina)

個展/スパイラルマーケット(青山)
あきよし台茶会「PLATFORM」/秋吉国際芸術村(美祢市)
2007
ミラノサローネ国際家具見本市(イタリア)
韓国萩陶芸交流展/韓国工芸文化振興院(ソウル)
萩4人展 3rd Hybrid for Individuality/彩陶庵ロフト(萩市)
2008
キノコヲツクルヒトビト/山口県立萩美術館・浦上記念館ワークショップ(萩市)
種々(くさぐさ)/山口県立萩美術館・浦上記念館 和風展示室(萩市)

今のうつわ これからのうつわ/多治見市文化工房ギャラリーヴォイス(多治見市)

萩・韓国現代陶芸交流展/旧久保田家住宅、旧田中別邸(萩市)

ワークショップ「土火っと遊び隊 2008夏」/山口県立萩美術館・浦上記念館和風展示室(萩市)

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